UNION TOKYOのホームにして、多くの名店がひしめくカレーのメッカ、渋谷区神宮前。そんな神宮前の街を舞台に、服と食との垣根を超えて展開するクロスオーバープロジェクト、UNION JINGUMAE CURRY CONNECTION。ここでは、本プロジェクトに参画するカレーショップ5店舗を深堀り。まずは同エリアの新名所『東急プラザ原宿 ハラカド』に出店するカレーショップ、『BEET EAT ハラカド』から。
『BEET EAT』は元々、世田谷区喜多見にて、昼はスパイスカレー、夜は店主の竹林さんが自ら獲ったジビエ肉のコース料理を提供する店舗として、多くの食マニアたちの間で話題を集めたインディペンデントなレストラン。そんな同店が原宿の新たな商業施設『ハラカド』に、2024年4月に出店。喜多見店の大規模改装と『ハラカド』側からのオファーが重なり、神宮前というカレー激戦区にて、新たな一歩を歩み始めた。
※2024年7月現在、喜多見店は改装休業中
「私が料理の道に入ったのは、交通事故がきっかけでした。トラックに突っ込まれて左足を粉砕骨折してしまい、3年くらい車椅子生活を余儀なくされたんです。そういった生活の中で、はじめて自身の食生活に向き合ったところ、自分がアレルギー体質だったということに気付きました。過去に食事後に救急車で運ばれたことも何度かあって、その時は単なる体調不良だとか自律神経失調症だとか診断されたんですが、思い返せばあれも、アナフィラキシーショックだったんだなって。そこからマクロビオティックを学ぶようになり、自分でも実践していくんですが、オーガニックな野菜や魚はあっても、オーガニックミードだけはどうやっても手に入らなかった。だったら自分で獲ってこようと思い、猟師さんの下で修行して、狩猟免許と銃砲所持許可を取得し、まずは自分で食べる用の肉を獲り始めたんです」。
その後ケータリングでのフード提供などを経て、2015年、世田谷区喜多見に『BEET EAT』をオープン。当初は友人知人を対象とした営業だったものの、ジビエ肉のコース料理、スパイスカレーといったカッティングエッジなメニューが話題を呼び、気付けば知る人ぞ知る人気店へ。と、ここで本題。ジビエ肉はわかるとして、なぜ、カレーだったのか。「1番は、ケータリングをやっていた時に、カレーをリクエストされることがとても多かったということ。だけど当時の私は、特にカレーが好きだったわけでもなくて、むしろアレルギーの観点から食べづらいメニューだったんです。その一方で、インドには菜食主義の方が多く、ベジタリアンカレーもたくさんある。だったらそのやり方を参考に、あくまで自分が食べられるという基準でマクロビ的な思想を反映しながらやってみようかなって。それから、インド・スパイス料理研究家の香取 薫先生の教室にも通い、少しずつ今のカタチができていきました」。
そんな竹林さんのオリジナルスパイスカレー、現在『BEET EAT ハラカド』で提供しているのは、レギュラー3種類に日替わりスペシャル1種類を加えた、計4種。レギュラーは、神戸牛とポークのキーマカレー、チキンカレー、エビカレーで、本記事トップで使用した写真はそれら3種の全部盛り。そしてこちらの写真は、この日のスペシャル、梅干ポークキーマカレー。「喜多見のお店だと、基本的にみなさん求めて来てくださっていたので、ある程度は自由にやれていたんです。だけどここは、あくまで商業施設のフードコート。カレーマニアでも食通でもなく、いわゆる一般のお客さまが対象ですから、それまでのやり方が全然通用しないんですよ。そういった中で考えたメニューが、現在のラインナップ。誰でも食べやすいスタンダードとしてチキンカレー、お肉が苦手な方向けのシーフードとしてエビカレー。それと1番人気の、神戸牛とポークのキーマカレーというラインナップです。中でもこの神戸牛とポークのキーマカレーは、喜多見のお店で提供していた熊肉カレーをベースにしています。熊肉って脂の融点が低いのが特徴なんですけど、毎日提供できる食材じゃないから、代わりに神戸牛の中でも希少な但馬牛のモツを使っているんです。この但馬牛のモツが熊肉のように脂の融点が低くて、それをポークキーマに入れることによって、熊肉カレーに似たコクを再現しています。まぁいちいち説明するのが面倒くさいのでザックリ『神戸牛』と言っていますが(笑)、こういった環境の中でも最大限にウチらしさが打ち出せたらな、という想いで提供しています。で、その3種だけだとお客さまも私も飽きちゃうので、季節や仕入れに応じた日替わり1種も加えて営業しています」。
カレーの他にも『BEET EAT』ならではのコンテンツとして展開しているのが、親交の深いワイン酒屋『エスポアしんかわ』にセレクトを一括して依頼しているという、ナチュールワインの数々。ナチュールワインというと格式高く聞こえるが、テーブルワインのようにカジュアルに楽しんでもらいたという思いから、ここハラカド店でも平日の昼間から提供中。良質なナチュールワインが気軽に楽しめる穴場スポットとして、ワイン好きの間ではジワジワと人気を集めているそう。赤白ともに銘柄はその時次第なので、行くたびに新しいワインに出会えるという楽しみも。
そして今回のUNION JINGUMAE CURRY CONNECTIONでは、コラボレーションパートナーに世田谷区羽根木のギャラリーショップ、『OUT OF MUSEUM』率いる小林 眞さんを招聘。90年代には神宮前エリアの多くの店舗デザインを手掛け、自身でも同地で飲食店を運営していた小林さんは、当時まだ10代で原宿を根城に遊んでいた竹林さんにとっては、雲の上のような存在だったとか。そんな2人が共通の知人を介して出会い、現在の『BEET EAT ハラカド』の店舗設計も小林さんが担当。その縁をたどり、20数年の時を経て神宮前という土地の力が実現したコラボレーションTシャツに。
最後に竹林さんは、新たな挑戦の場所として腰を下ろした神宮前というエリアについてこう話してくれた。
「私自身、昔はよくこの辺りで遊んでいたし、当時の原宿シーンにも憧れがあったし、とても愛着がある場所。それから、大きな事故を経験して、20数年の月日が経って、まさかまたこの街に戻ってきて、しかもカレー屋をやっているなんて夢にも思わなかったですね。そういう意味では単純に嬉しいことではあるけど、もちろん当時と今では、街の規模も人の数も全然違う。それが良いのか悪いのかわからないけど、大きな資本があってこその街になってしまったっていう意味では、寂しさも感じます。でも、だからこそ強烈な個性とパワーで今の時代を牽引する、シンボリックな存在があって良いと思うんですよ。もちろんウチ単体でそんなことができるとは思ってはいないけど、そういった今だからこそできる面白い動きに、少しでも携われれば嬉しいですね」。
<< SHOP DATA>>
BEET EAT ハラカド
渋谷区神宮前6-31-21 東急プラザ原宿「ハラカド」6F
@beet_eat_harakado
@beet_eat_2015
PRICE
¥8,800
RELEASE
2024/07/27 (SAT)
DESIGNED BY
OUT OF MUSEUM
世田谷区羽根木1-8-1 羽根木マンション1F
@outofmuseum
UNION TOKYOのホームにして、多くの名店がひしめくカレーのメッカ、渋谷区神宮前。そんな神宮前の街を舞台に、服と食との垣根を超えて展開するクロスオーバープロジェクト、UNION JINGUMAE CURRY CONNECTION。ここでは、本プロジェクトに参画するカレーショップ5店舗を深堀り。まずは同エリアの新名所『東急プラザ原宿 ハラカド』に出店するカレーショップ、『BEET EAT ハラカド』から。
『BEET EAT』は元々、世田谷区喜多見にて、昼はスパイスカレー、夜は店主の竹林さんが自ら獲ったジビエ肉のコース料理を提供する店舗として、多くの食マニアたちの間で話題を集めたインディペンデントなレストラン。そんな同店が原宿の新たな商業施設『ハラカド』に、2024年4月に出店。喜多見店の大規模改装と『ハラカド』側からのオファーが重なり、神宮前というカレー激戦区にて、新たな一歩を歩み始めた。
※2024年7月現在、喜多見店は改装休業中
「私が料理の道に入ったのは、交通事故がきっかけでした。トラックに突っ込まれて左足を粉砕骨折してしまい、3年くらい車椅子生活を余儀なくされたんです。そういった生活の中で、はじめて自身の食生活に向き合ったところ、自分がアレルギー体質だったということに気付きました。過去に食事後に救急車で運ばれたことも何度かあって、その時は単なる体調不良だとか自律神経失調症だとか診断されたんですが、思い返せばあれも、アナフィラキシーショックだったんだなって。そこからマクロビオティックを学ぶようになり、自分でも実践していくんですが、オーガニックな野菜や魚はあっても、オーガニックミードだけはどうやっても手に入らなかった。だったら自分で獲ってこようと思い、猟師さんの下で修行して、狩猟免許と銃砲所持許可を取得し、まずは自分で食べる用の肉を獲り始めたんです」。
その後ケータリングでのフード提供などを経て、2015年、世田谷区喜多見に『BEET EAT』をオープン。当初は友人知人を対象とした営業だったものの、ジビエ肉のコース料理、スパイスカレーといったカッティングエッジなメニューが話題を呼び、気付けば知る人ぞ知る人気店へ。と、ここで本題。ジビエ肉はわかるとして、なぜ、カレーだったのか。「1番は、ケータリングをやっていた時に、カレーをリクエストされることがとても多かったということ。だけど当時の私は、特にカレーが好きだったわけでもなくて、むしろアレルギーの観点から食べづらいメニューだったんです。その一方で、インドには菜食主義の方が多く、ベジタリアンカレーもたくさんある。だったらそのやり方を参考に、あくまで自分が食べられるという基準でマクロビ的な思想を反映しながらやってみようかなって。それから、インド・スパイス料理研究家の香取 薫先生の教室にも通い、少しずつ今のカタチができていきました」。
そんな竹林さんのオリジナルスパイスカレー、現在『BEET EAT ハラカド』で提供しているのは、レギュラー3種類に日替わりスペシャル1種類を加えた、計4種。レギュラーは、神戸牛とポークのキーマカレー、チキンカレー、エビカレーで、本記事トップで使用した写真はそれら3種の全部盛り。そしてこちらの写真は、この日のスペシャル、梅干ポークキーマカレー。「喜多見のお店だと、基本的にみなさん求めて来てくださっていたので、ある程度は自由にやれていたんです。だけどここは、あくまで商業施設のフードコート。カレーマニアでも食通でもなく、いわゆる一般のお客さまが対象ですから、それまでのやり方が全然通用しないんですよ。そういった中で考えたメニューが、現在のラインナップ。誰でも食べやすいスタンダードとしてチキンカレー、お肉が苦手な方向けのシーフードとしてエビカレー。それと1番人気の、神戸牛とポークのキーマカレーというラインナップです。中でもこの神戸牛とポークのキーマカレーは、喜多見のお店で提供していた熊肉カレーをベースにしています。熊肉って脂の融点が低いのが特徴なんですけど、毎日提供できる食材じゃないから、代わりに神戸牛の中でも希少な但馬牛のモツを使っているんです。この但馬牛のモツが熊肉のように脂の融点が低くて、それをポークキーマに入れることによって、熊肉カレーに似たコクを再現しています。まぁいちいち説明するのが面倒くさいのでザックリ『神戸牛』と言っていますが(笑)、こういった環境の中でも最大限にウチらしさが打ち出せたらな、という想いで提供しています。で、その3種だけだとお客さまも私も飽きちゃうので、季節や仕入れに応じた日替わり1種も加えて営業しています」。
カレーの他にも『BEET EAT』ならではのコンテンツとして展開しているのが、親交の深いワイン酒屋『エスポアしんかわ』にセレクトを一括して依頼しているという、ナチュールワインの数々。ナチュールワインというと格式高く聞こえるが、テーブルワインのようにカジュアルに楽しんでもらいたという思いから、ここハラカド店でも平日の昼間から提供中。良質なナチュールワインが気軽に楽しめる穴場スポットとして、ワイン好きの間ではジワジワと人気を集めているそう。赤白ともに銘柄はその時次第なので、行くたびに新しいワインに出会えるという楽しみも。
そして今回のUNION JINGUMAE CURRY CONNECTIONでは、コラボレーションパートナーに世田谷区羽根木のギャラリーショップ、『OUT OF MUSEUM』率いる小林 眞さんを招聘。90年代には神宮前エリアの多くの店舗デザインを手掛け、自身でも同地で飲食店を運営していた小林さんは、当時まだ10代で原宿を根城に遊んでいた竹林さんにとっては、雲の上のような存在だったとか。そんな2人が共通の知人を介して出会い、現在の『BEET EAT ハラカド』の店舗設計も小林さんが担当。その縁をたどり、20数年の時を経て神宮前という土地の力が実現したコラボレーションTシャツに。
最後に竹林さんは、新たな挑戦の場所として腰を下ろした神宮前というエリアについてこう話してくれた。
「私自身、昔はよくこの辺りで遊んでいたし、当時の原宿シーンにも憧れがあったし、とても愛着がある場所。それから、大きな事故を経験して、20数年の月日が経って、まさかまたこの街に戻ってきて、しかもカレー屋をやっているなんて夢にも思わなかったですね。そういう意味では単純に嬉しいことではあるけど、もちろん当時と今では、街の規模も人の数も全然違う。それが良いのか悪いのかわからないけど、大きな資本があってこその街になってしまったっていう意味では、寂しさも感じます。でも、だからこそ強烈な個性とパワーで今の時代を牽引する、シンボリックな存在があって良いと思うんですよ。もちろんウチ単体でそんなことができるとは思ってはいないけど、そういった今だからこそできる面白い動きに、少しでも携われれば嬉しいですね」。
<< SHOP DATA>>
BEET EAT ハラカド
渋谷区神宮前6-31-21 東急プラザ原宿「ハラカド」6F
@beet_eat_harakado
@beet_eat_2015
PRICE
¥8,800
RELEASE
2024/07/27 (SAT)
DESIGNED BY
OUT OF MUSEUM
世田谷区羽根木1-8-1 羽根木マンション1F
@outofmuseum