10月1日のUNION OSAKAオープニングにあわせて来日した、オーナーのクリス・ギブスと、彼の妻でありUNIONのスタイリングディレクションを務めるデザイナー/スタイリストのベス・バーケット。クリスと同じく、ベスもまた初期からショップに関わってきたUNIONを語る上で欠かすことのできない人物として知られている。2人揃っての来日という貴重な機会に、雑談も交えながら彼らが生み出すクリエーションやカルチャーについて話してもらった。
ー UNION OSAKAのオープニングはいかがでしたか?
ベス:素晴らしかったです。いつものファミリーや友人、何年も会えていなかった知り合いまでみんなが大阪に集まってくれて、まるでブロックパーティーのようでした。
クリス:そうだね。僕は街を歩くのが好きだから、店から10分くらいの距離を歩いて回ってみたんだ。近くに川(道頓堀)が流れているよね?あの感じがすごく良かった。今回は時間がなかったから遠くまでは行けなかったけど、次に来る時はもっと色々なエリアを見て回りたいな。
ーベスさんは今回久しぶりの来日ですよね?
ベス:大阪も、それにUNION TOKYOも訪れるのは今回が初めてでした。約5年ぶりの来日ですから、東京の街もすべてが変わったように感じられますね。
ーこのインタビューを、日本のUNIONファンにベスさんのことをより深く知ってもらう機会にできればと思っています。まずはこのお店とのストーリーを改めて教えてもらえますか?
ベス:かなり昔、わたしがNYのステューシーで働いていた頃まで遡ることになります。当時はあの周辺のコミュニティ自体が小さなものでしたから、UNIONを創業したジェームス・ジェビアやマリー・アンとも自然につながり、その流れで働き始めました。近所のスノーボードショップで働いていたクリスをUNIONに誘ったのもわたしです。
ーその頃からUNIONに関わり続け、現在はどのような役割を担っていますか?
ベス:これまでマーケティングや、スチールやビデオ撮影の際のキャスティングやディレクションなど幅広く担当してきましたが、近年はそうした役割に加え、UNIONのストーリー形成により深く関わるような全体のクリエイティブディレクションに携わる機会も増えました。ジョーダンブランドやカナダグースといった他ブランドとのコラボプロジェクトにも関わっています。
ーオーナーのクリスさんから見ても、UNIONの中でベスさんが果たしている役割は大きなものですか?
クリス:もちろんだよ。UNIONを拡大していくということに関して言えば、僕よりベスの方がはっきりとしたビジョンを持っているくらいだ。オリジナルブランドを作ろうと最初に言ったのも彼女だし、ただ洋服を売るだけではない新しいアイディアを常に考え続けてくれている。彼女に比べれば僕は本当にスローな人間さ(笑)。
ベス:わたしはUNIONをライフスタイルブランドだと考えていますから、今後は洋服だけでなくより色々なものを提案していきたいんです。コーヒー、料理、家具、もしかしたらわたしたち2人のルーツでもあるカリブを感じさせるブティックホテルかもしれません。
ーカリブをルーツに持つとお聞きして、UNIONのオリジナルブランドに見られるカラフルな色使いやグラフィックのバックグラウンドを知れた気がします。その他にも、ベスさんの中でクリエイティブの源になっているものはありますか?
ベス:自身のルーツから影響を受ける一方で、こうして日本を訪れることで得られるような異なる文化からのインスピレーションもわたしのクリエイティブに大きな影響を与えています。そしてもうひとつ、「神は細部に宿る」という言葉がありますがまさしくその通りで、わたしは洋服や人々の着こなしのディテールについ目が行ってしまいますね。これはヴァーゴ(乙女座)ならではの性格でしょう(笑)。
ー確かに乙女座の人は細かいことによく気がつく性格と言われますよね。ちなみにクリスさんは何座ですか?
クリス:僕はスコーピオ(蠍座)だよ。
ーベスさんはアメリカのVODサービス「HBO Max」が配信する、若手ファッションデザイナーたちが成功のチャンスを掴むために競い合うリアリティ番組『ザ・ハイプ』に、ミーゴスのオフセットやスタイリストのマーニ・セノフォンテといった方々とともに審査員として出演されていますよね。
ベス:ファッション系のリアリティ番組と言えば、かつては『プロジェクト・ランウェイ』などが人気でしたが、『ザ・ハイプ』はより今の時代に合った内容だと思います。最近の若手デザイナーは自分たちが作った洋服をいかにセレブに着てもらうかばかりを考え、インスタグラムでPRし、彼らが着てくれたら「自分のブランドはもう売れた」と過信してしまう人が多いんです。しかしそれらは実際には、何シーズンも追いかけてくれるファンを育てること、洋服に自身のストーリーを投影すること、つまり本当の意味でのブランドを形成していくことはまったく別の話です。わたしはこの番組を通してそうした考え方を教えたいと思っているんです。視聴者にとっては厳しい審査員に映るでしょう(笑)。
ー番組関連の記事を読んだ時にベスさんの発言として「洋服を通してストーリーを伝える方法を知らなければ、人々にあなたのブランドを買いたいと思ってもらうことは難しいでしょう」という言葉が載っていましたがまさにその通りですね。こうした考えはUNIONのディレクションにも通じるものだと感じられますが、いかがですか?
ベス:そうですね。UNIONの場合、わたしたちが携わる以前から存在し、何より30年以上の歴史を持つブランドですから、これまでに様々なストーリーがありました。その中でもクリスがオーナーになって確立された、ストリートウェアとハイファッションを交わらせるスタイルの提案というストーリーは、その後のオリジナルブランドにも続くとても重要なものだと思います。
ナイキ、ジョーダンブランド、ドーバーストリートマーケット、マルニ、ノア、それにオンラインセラミックス。長く愛されているブランドはいずれも自分たちのストーリーを確立しています。それがあることで、それぞれのファンは「自分もその一部になりたい」と思うのではないでしょうか。
ークリスさんに質問です。UNION OSAKAのオープニングパーティでもDJをされていたJ・ロックに前回の来日の際にインタビューしたのですが、ベスさんと同様に、ストーリーというものをとても大切にされているような話しぶりが印象的でした。UNIONのカルチャーを形作る人々は、ある種の共通点を持っていると感じますか?
クリス:そうかもしれないね。UNIONがショップや洋服を通して行っていることと同じく、J・ロックのDJというのもひとつのストーリーテリングだと思う。多くのDJは音楽を表面的に選曲し、みんなが踊ってくれればそれで良いくらいに考えているけど、彼はもっと深いところまで音楽を理解してプレイしているんだ。本物のマスターだよ。
ーUNION OSAKAのオープニングにあわせて彼とのコラボMIXテープを制作されましたが、その際にもそうした理解の深さを感じましたか?
クリス:そうだね。僕のリクエストはUNION初期の時代、91年くらいの音楽にフォーカスして作ってほしいというものだったんだけど、彼はそれを本当に深いところまで掘り下げて作ってくれたことがMIXを聴いた瞬間に分かったよ。
ー性格的な共通点もあると思いますか?
クリス:ヴァイブスが似ていて、2人とも少し変わっているところかな…。そう、僕たちはきっと“変な人”なんだ(笑)。だからこそ理解してほしくて、自分の考えを伝えようとこうして延々と話してしまうんだろうね。
INTERVIEW&TEXT:YOHSUKE WATANABE (IN FOCUS)
PHOTO:ASUKA ITO
10月1日のUNION OSAKAオープニングにあわせて来日した、オーナーのクリス・ギブスと、彼の妻でありUNIONのスタイリングディレクションを務めるデザイナー/スタイリストのベス・バーケット。クリスと同じく、ベスもまた初期からショップに関わってきたUNIONを語る上で欠かすことのできない人物として知られている。2人揃っての来日という貴重な機会に、雑談も交えながら彼らが生み出すクリエーションやカルチャーについて話してもらった。
ー UNION OSAKAのオープニングはいかがでしたか?
ベス:素晴らしかったです。いつものファミリーや友人、何年も会えていなかった知り合いまでみんなが大阪に集まってくれて、まるでブロックパーティーのようでした。
クリス:そうだね。僕は街を歩くのが好きだから、店から10分くらいの距離を歩いて回ってみたんだ。近くに川(道頓堀)が流れているよね?あの感じがすごく良かった。今回は時間がなかったから遠くまでは行けなかったけど、次に来る時はもっと色々なエリアを見て回りたいな。
ーベスさんは今回久しぶりの来日ですよね?
ベス:大阪も、それにUNION TOKYOも訪れるのは今回が初めてでした。約5年ぶりの来日ですから、東京の街もすべてが変わったように感じられますね。
ーこのインタビューを、日本のUNIONファンにベスさんのことをより深く知ってもらう機会にできればと思っています。まずはこのお店とのストーリーを改めて教えてもらえますか?
ベス:かなり昔、わたしがNYのステューシーで働いていた頃まで遡ることになります。当時はあの周辺のコミュニティ自体が小さなものでしたから、UNIONを創業したジェームス・ジェビアやマリー・アンとも自然につながり、その流れで働き始めました。近所のスノーボードショップで働いていたクリスをUNIONに誘ったのもわたしです。
ーその頃からUNIONに関わり続け、現在はどのような役割を担っていますか?
ベス:これまでマーケティングや、スチールやビデオ撮影の際のキャスティングやディレクションなど幅広く担当してきましたが、近年はそうした役割に加え、UNIONのストーリー形成により深く関わるような全体のクリエイティブディレクションに携わる機会も増えました。ジョーダンブランドやカナダグースといった他ブランドとのコラボプロジェクトにも関わっています。
ーオーナーのクリスさんから見ても、UNIONの中でベスさんが果たしている役割は大きなものですか?
クリス:もちろんだよ。UNIONを拡大していくということに関して言えば、僕よりベスの方がはっきりとしたビジョンを持っているくらいだ。オリジナルブランドを作ろうと最初に言ったのも彼女だし、ただ洋服を売るだけではない新しいアイディアを常に考え続けてくれている。彼女に比べれば僕は本当にスローな人間さ(笑)。
ベス:わたしはUNIONをライフスタイルブランドだと考えていますから、今後は洋服だけでなくより色々なものを提案していきたいんです。コーヒー、料理、家具、もしかしたらわたしたち2人のルーツでもあるカリブを感じさせるブティックホテルかもしれません。
ーカリブをルーツに持つとお聞きして、UNIONのオリジナルブランドに見られるカラフルな色使いやグラフィックのバックグラウンドを知れた気がします。その他にも、ベスさんの中でクリエイティブの源になっているものはありますか?
ベス:自身のルーツから影響を受ける一方で、こうして日本を訪れることで得られるような異なる文化からのインスピレーションもわたしのクリエイティブに大きな影響を与えています。そしてもうひとつ、「神は細部に宿る」という言葉がありますがまさしくその通りで、わたしは洋服や人々の着こなしのディテールについ目が行ってしまいますね。これはヴァーゴ(乙女座)ならではの性格でしょう(笑)。
ー確かに乙女座の人は細かいことによく気がつく性格と言われますよね。ちなみにクリスさんは何座ですか?
クリス:僕はスコーピオ(蠍座)だよ。
ーベスさんはアメリカのVODサービス「HBO Max」が配信する、若手ファッションデザイナーたちが成功のチャンスを掴むために競い合うリアリティ番組『ザ・ハイプ』に、ミーゴスのオフセットやスタイリストのマーニ・セノフォンテといった方々とともに審査員として出演されていますよね。
ベス:ファッション系のリアリティ番組と言えば、かつては『プロジェクト・ランウェイ』などが人気でしたが、『ザ・ハイプ』はより今の時代に合った内容だと思います。最近の若手デザイナーは自分たちが作った洋服をいかにセレブに着てもらうかばかりを考え、インスタグラムでPRし、彼らが着てくれたら「自分のブランドはもう売れた」と過信してしまう人が多いんです。しかしそれらは実際には、何シーズンも追いかけてくれるファンを育てること、洋服に自身のストーリーを投影すること、つまり本当の意味でのブランドを形成していくことはまったく別の話です。わたしはこの番組を通してそうした考え方を教えたいと思っているんです。視聴者にとっては厳しい審査員に映るでしょう(笑)。
ー番組関連の記事を読んだ時にベスさんの発言として「洋服を通してストーリーを伝える方法を知らなければ、人々にあなたのブランドを買いたいと思ってもらうことは難しいでしょう」という言葉が載っていましたがまさにその通りですね。こうした考えはUNIONのディレクションにも通じるものだと感じられますが、いかがですか?
ベス:そうですね。UNIONの場合、わたしたちが携わる以前から存在し、何より30年以上の歴史を持つブランドですから、これまでに様々なストーリーがありました。その中でもクリスがオーナーになって確立された、ストリートウェアとハイファッションを交わらせるスタイルの提案というストーリーは、その後のオリジナルブランドにも続くとても重要なものだと思います。
ナイキ、ジョーダンブランド、ドーバーストリートマーケット、マルニ、ノア、それにオンラインセラミックス。長く愛されているブランドはいずれも自分たちのストーリーを確立しています。それがあることで、それぞれのファンは「自分もその一部になりたい」と思うのではないでしょうか。
ークリスさんに質問です。UNION OSAKAのオープニングパーティでもDJをされていたJ・ロックに前回の来日の際にインタビューしたのですが、ベスさんと同様に、ストーリーというものをとても大切にされているような話しぶりが印象的でした。UNIONのカルチャーを形作る人々は、ある種の共通点を持っていると感じますか?
クリス:そうかもしれないね。UNIONがショップや洋服を通して行っていることと同じく、J・ロックのDJというのもひとつのストーリーテリングだと思う。多くのDJは音楽を表面的に選曲し、みんなが踊ってくれればそれで良いくらいに考えているけど、彼はもっと深いところまで音楽を理解してプレイしているんだ。本物のマスターだよ。
ーUNION OSAKAのオープニングにあわせて彼とのコラボMIXテープを制作されましたが、その際にもそうした理解の深さを感じましたか?
クリス:そうだね。僕のリクエストはUNION初期の時代、91年くらいの音楽にフォーカスして作ってほしいというものだったんだけど、彼はそれを本当に深いところまで掘り下げて作ってくれたことがMIXを聴いた瞬間に分かったよ。
ー性格的な共通点もあると思いますか?
クリス:ヴァイブスが似ていて、2人とも少し変わっているところかな…。そう、僕たちはきっと“変な人”なんだ(笑)。だからこそ理解してほしくて、自分の考えを伝えようとこうして延々と話してしまうんだろうね。
INTERVIEW&TEXT:YOHSUKE WATANABE (IN FOCUS)
PHOTO:ASUKA ITO