KNOW THE LEDGE / MUSIC BREAK - THE ROOTS

KNOW THE LEDGE / MUSIC BREAK - THE ROOTS

この連載「KNOW THE LEDGE / MUSIC BREAK」は、UNIONを構成する様々なカルチャー、その中でも音楽にスポットを当てて探求し、読んでくれた一人ひとりにとって“学び”のきっかけになればと続けている。カルチャーの語源は“耕す”こと。そこに蒔かれる種が何であれ、深く、立派な根(ルーツ)が張られるために。今回紹介する偉大なHIPHOPグループは、まさに名は体を表す存在である。ザ・ルーツ。9年ぶりの来日公演を目前に控えた今、この巨木が立つ豊かな土壌を掘り起こしてみようと思う。その根はどこまで張り巡らされているのだろうか。



1993年にフィラデルフィアで結成されたザ・ルーツは、バンドスタイルの生演奏によるHIPHOPサウンドを確立した先駆的クルーとして知られている。デビューから現在まで、約30年にわたる長いキャリアの中でメンバー構成は多様な変化を繰り返してきたが、創設者でありバンドの核となるブラック・ソート(MC)とクエストラヴ(ドラム)の2名は変わっていない。その功績は輝かしいもので、エリカ・バドゥを迎えた彼らの代表曲「You Got Me」をはじめ、ジョン・レジェンドとの共作アルバム『Wake Up!』や収録曲「Hang On in There」によって、グラミー賞で7年計14回のノミネートと3度の受賞を経験。また2009年からはコメディアンのジミー・ファロンが司会を務めるアメリカNBCの人気テレビ番組「Late Night with Jimmy Fallon」(2014年からは「The Tonight Show」)でハウスバンドを務め、それ以降彼らの活躍ぶりはお茶の間まで広く知られるものとなった。とは言えザ・ルーツはポップスターではない。どんなに認知度が高まり、ユーモア溢れるトークがテレビの向こう側の笑いを誘ったとしても、その人気を支えているのは卓越したスキルに裏付けられたプロフェッショナルなパフォーマンスに他ならない。DJがかけるビートとMC、その組み合わせをHIPHOPのオーソドックスな型とするなら、彼らはそこに生演奏という手法を持ち込むことで自身の音楽にオリジナリティを見出し、ファンクやジャズといった源流(ルーツ)にまで接続することに成功した。そんな彼らのライブにはまた、この「KNOW THE LEDGE / MUSIC BREAK」で紹介すべきひとつの特徴を見て取ることができる。カバー曲の存在だ。

ザ・ルーツは自分たちのライブで数多くのカバー曲を演奏している。ここ数年は平均でセットリストの1/3、多い時には半分がそれに割かれることもある。もちろん往年の名曲が奏でられれば盛り上がるし、彼らのスキルをもってすればそれらはカバーの域を超え、まるで元々自分たちの曲であったかのようにオーディエンスを盛り上げることもできるだろう。しかし理由は果たしてそれだけだろうか。クエストラブは自身のポッドキャスト番組を2016年から続けている。毎回異なるゲストを招き、それぞれの生い立ちから最新プロジェクトまで深く掘り下げて聞き出すこの「Questlove Supreme」には、これまでスパイク・リー、DJプレミア、ピーナッツ・バター・ウルフ、それにミシェル・オバマまで多種多様な豪華ゲストが出演してきた。番組の紹介文にはこう書かれている。「楽しく(Fun)、図々しく(Irreverent)、そして教育的な(Educational)ものである」と。それはまさしく、ザ・ルーツの(特に近年の)ライブそのものだろう。楽しく、図々しく、そして“教育的な”示唆に富んだ体験としてのパフォーマンス。あくまで推測の域を出ないが、そう捉えるだけで彼らのライブは何倍も豊かなものに感じられる。下記に近年の主要なカバー曲、その原曲をまとめたので是非聴いてみてほしい。今回の来日公演は既にソールドアウトしてしまったようだが、幸運にもチケットを手にできた人には現場で比較を楽しむ予習として、それ以外の人にとってもこの巨木が根を張る“耕された”土壌の豊かさに触れる機会として楽しんでもらえたらと思う。


「Jungle Boogie」Kool & The Gang
1964年から活動する、アメリカの伝説的なR&B/ソウル/ファンクバンドが1973年にリリースしたアルバム『Wild and Peaceful』に収録。


「Men at Work」Kool G Rap & DJ Polo
史上最高のラッパーとして度々名前が上がるクール・G・ラップが、盟友DJポロとともにリリースした1989年のデビューアルバム『Road to the Riches』に収録。


「Move On Up」Curtis Mayfield
代表曲「People Get Ready」で知られるカーティス・メイフィールドが1970年にリリースしたデビューアルバム『Curtis』に収録。
カニエ・ウエストが「Touch the Sky」でサンプリングしたことでもお馴染み。


「Lookin' at the Front Door」Main Source
ラージ・プロフェッサー、K・カット、サー・スクラッチによって1989年に結成されたHIPHOPグループ、メイン・ソースの代表曲。
その知的なリリックは、ブラック・ソートにも通じる。


「Change (Makes You Want to Hustle)」Donald Byrd
伝説のトランペッター、ドナルド・バードのジャズ・ファンク期を代表する一曲。
ストリート ビート レコードからリリースされていたHIPHOPコンピレーションアルバムシリーズ『Ultimate Breaks & Beats』にも収録されていた。


「Think Twice」Donald Byrd
同じくドナルド・バードの、1975年にリリースされたアルバム『Stepping into Tomorrow』から。
J・ディラやエリカ・バドゥといった、ザ・ルーツと関わりの深いアーティストがカバーしていることでも知られる。


「You're the One for Me」D‐Train
1980年代前半に活躍したアメリカのポスト・ディスコデュオの同名アルバムから。「Keep On」と並ぶD・トレインの代表曲。


「Soul Makossa」Manu Dibango
サックス奏者、​​マヌ・ディバンゴが1972年にリリース。
Makossa(マコッサ)とはマヌの母国カメルーンで生まれたアーバンミュージックの1ジャンルで、1960年代にそのスタイルが確立され、
1980年代には世界的に知られるようになった。



それにしても2014年の『...And Then You Shoot Your Cousin』以来のアルバムとして度々話題に上がる新作『End Game』はいつ届けられるのだろうか…。噂では故J・ディラのビートが使用されているという。彼らの代表作『Things Fall Apart』に匹敵するような、時代を超えて聴き続けられる名盤となることを期待しながら、いまはその続報を待ちたい。



THE ROOTS Billboard Live 15th Anniversary Premium Live

【ビルボードライブ大阪】(1日2回公演)※両公演ともソールドアウト
8/23(火)
1stステージ 開場17:00 開演18:00 / 2ndステージ 開場20:00 開演21:00
サービスエリア ¥14,900、カジュアルエリア ¥14,900(1 ドリンク付)

【ビルボードライブ横浜】(1日2回公演)※両公演ともソールドアウト
8月24日(水)
1stステージ 開場17:00 開演18:00 / 2ndステージ 開場20:00 開演21:00
サービスエリア ¥14,900、カジュアルエリア ¥14,900(1ドリンク付)

【ビルボードライブ東京】(1日2回公演)※両公演ともソールドアウト
8/26(金)
1stステージ 開場17:00 開演18:00 / 2ndステージ 開場20:00 開演21:00
サービスエリア ¥14,900、カジュアルエリア ¥14,900(1 ドリンク付)

8/27(土)
1stステージ 開場17:00 開演18:00 / 2ndステージ 開場20:00 開演21:00
サービスエリア ¥14,900、カジュアルエリア ¥14,900(1 ドリンク付)

http://www.billboard-live.com/

TEXT:YOHSUKE WATANABE (IN FOCUS)


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この連載「KNOW THE LEDGE / MUSIC BREAK」は、UNIONを構成する様々なカルチャー、その中でも音楽にスポットを当てて探求し、読んでくれた一人ひとりにとって“学び”のきっかけになればと続けている。カルチャーの語源は“耕す”こと。そこに蒔かれる種が何であれ、深く、立派な根(ルーツ)が張られるために。今回紹介する偉大なHIPHOPグループは、まさに名は体を表す存在である。ザ・ルーツ。9年ぶりの来日公演を目前に控えた今、この巨木が立つ豊かな土壌を掘り起こしてみようと思う。その根はどこまで張り巡らされているのだろうか。



1993年にフィラデルフィアで結成されたザ・ルーツは、バンドスタイルの生演奏によるHIPHOPサウンドを確立した先駆的クルーとして知られている。デビューから現在まで、約30年にわたる長いキャリアの中でメンバー構成は多様な変化を繰り返してきたが、創設者でありバンドの核となるブラック・ソート(MC)とクエストラヴ(ドラム)の2名は変わっていない。その功績は輝かしいもので、エリカ・バドゥを迎えた彼らの代表曲「You Got Me」をはじめ、ジョン・レジェンドとの共作アルバム『Wake Up!』や収録曲「Hang On in There」によって、グラミー賞で7年計14回のノミネートと3度の受賞を経験。また2009年からはコメディアンのジミー・ファロンが司会を務めるアメリカNBCの人気テレビ番組「Late Night with Jimmy Fallon」(2014年からは「The Tonight Show」)でハウスバンドを務め、それ以降彼らの活躍ぶりはお茶の間まで広く知られるものとなった。 とは言えザ・ルーツはポップスターではない。どんなに認知度が高まり、ユーモア溢れるトークがテレビの向こう側の笑いを誘ったとしても、その人気を支えているのは卓越したスキルに裏付けられたプロフェッショナルなパフォーマンスに他ならない。DJがかけるビートとMC、その組み合わせをHIPHOPのオーソドックスな型とするなら、彼らはそこに生演奏という手法を持ち込むことで自身の音楽にオリジナリティを見出し、ファンクやジャズといった源流(ルーツ)にまで接続することに成功した。そんな彼らのライブにはまた、この「KNOW THE LEDGE / MUSIC BREAK」で紹介すべきひとつの特徴を見て取ることができる。カバー曲の存在だ。

ザ・ルーツは自分たちのライブで数多くのカバー曲を演奏している。ここ数年は平均でセットリストの1/3、多い時には半分がそれに割かれることもある。もちろん往年の名曲が奏でられれば盛り上がるし、彼らのスキルをもってすればそれらはカバーの域を超え、まるで元々自分たちの曲であったかのようにオーディエンスを盛り上げることもできるだろう。しかし理由は果たしてそれだけだろうか。クエストラブは自身のポッドキャスト番組を2016年から続けている。毎回異なるゲストを招き、それぞれの生い立ちから最新プロジェクトまで深く掘り下げて聞き出すこの「Questlove Supreme」には、これまでスパイク・リー、DJプレミア、ピーナッツ・バター・ウルフ、それにミシェル・オバマまで多種多様な豪華ゲストが出演してきた。番組の紹介文にはこう書かれている。「楽しく(Fun)、図々しく(Irreverent)、そして教育的な(Educational)ものである」と。それはまさしく、ザ・ルーツの(特に近年の)ライブそのものだろう。楽しく、図々しく、そして“教育的な”示唆に富んだ体験としてのパフォーマンス。あくまで推測の域を出ないが、そう捉えるだけで彼らのライブは何倍も豊かなものに感じられる。下記に近年の主要なカバー曲、その原曲をまとめたので是非聴いてみてほしい。今回の来日公演は既にソールドアウトしてしまったようだが、幸運にもチケットを手にできた人には現場で比較を楽しむ予習として、それ以外の人にとってもこの巨木が根を張る“耕された”土壌の豊かさに触れる機会として楽しんでもらえたらと思う。



「Jungle Boogie」Kool & The Gang
1964年から活動する、アメリカの伝説的なR&B/ソウル/ファンクバンドが1973年にリリースしたアルバム『Wild and Peaceful』に収録。

「Men at Work」Kool G Rap & DJ Polo
史上最高のラッパーとして度々名前が上がるクール・G・ラップが、盟友DJポロとともにリリースした1989年のデビューアルバム『Road to the Riches』に収録。

「Move On Up」Curtis Mayfield
代表曲「People Get Ready」で知られるカーティス・メイフィールドが1970年にリリースしたデビューアルバム『Curtis』に収録。
カニエ・ウエストが「Touch the Sky」でサンプリングしたことでもお馴染み。

「Lookin' at the Front Door」Main Source
ラージ・プロフェッサー、K・カット、サー・スクラッチによって1989年に結成されたHIPHOPグループ、メイン・ソースの代表曲。
その知的なリリックは、ブラック・ソートにも通じる。

「Change (Makes You Want to Hustle)」Donald Byrd
伝説のトランペッター、ドナルド・バードのジャズ・ファンク期を代表する一曲。
ストリート ビート レコードからリリースされていたHIPHOPコンピレーションアルバムシリーズ『Ultimate Breaks & Beats』にも収録されていた。

「Think Twice」Donald Byrd
同じくドナルド・バードの、1975年にリリースされたアルバム『Stepping into Tomorrow』から。
J・ディラやエリカ・バドゥといった、ザ・ルーツと関わりの深いアーティストがカバーしていることでも知られる。

「Soul Makossa」Manu Dibango
サックス奏者、​​マヌ・ディバンゴが1972年にリリース。
Makossa(マコッサ)とはマヌの母国カメルーンで生まれたアーバンミュージックの1ジャンルで、1960年代にそのスタイルが確立され、1980年代には世界的に知られるようになった。

それにしても2014年の『...And Then You Shoot Your Cousin』以来のアルバムとして度々話題に上がる新作『End Game』はいつ届けられるのだろうか…。噂では故J・ディラのビートが使用されているという。彼らの代表作『Things Fall Apart』に匹敵するような、時代を超えて聴き続けられる名盤となることを期待しながら、いまはその続報を待ちたい。



THE ROOTS Billboard Live 15th Anniversary Premium Live

【ビルボードライブ大阪】(1日2回公演)※両公演ともソールドアウト
8/23(火)
1stステージ 開場17:00 開演18:00 / 2ndステージ 開場20:00 開演21:00
サービスエリア ¥14,900、カジュアルエリア ¥14,900(1 ドリンク付)

【ビルボードライブ横浜】(1日2回公演)※両公演ともソールドアウト
8月24日(水)
1stステージ 開場17:00 開演18:00 / 2ndステージ 開場20:00 開演21:00
サービスエリア ¥14,900、カジュアルエリア ¥14,900(1ドリンク付)

【ビルボードライブ東京】(1日2回公演)※両公演ともソールドアウト
8/26(金)
1stステージ 開場17:00 開演18:00 / 2ndステージ 開場20:00 開演21:00
サービスエリア ¥14,900、カジュアルエリア ¥14,900(1 ドリンク付)

8/27(土)
1stステージ 開場17:00 開演18:00 / 2ndステージ 開場20:00 開演21:00
サービスエリア ¥14,900、カジュアルエリア ¥14,900(1 ドリンク付)

http://www.billboard-live.com/

TEXT:YOHSUKE WATANABE (IN FOCUS)


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