先日もUNION TOKYOの4周年を記念して、DIGAWEL、PORTERとのトリプルコラボによるアイテムをリリースするなど、当店とも縁の深いSTONES THROW。LAを代表するそんなインディペンデントレーベルに所属し、ニューエイジ・ミュージックを更新し続けるピアニスト、ジョン・キャロル・カービーをご存知だろうか。今週末にスタートする初来日ツアーを目前に、今回の『KNOW THE LEDGE / MUSIC BREAK』では本人へのインタビューを行い、その言葉も借りながら彼の魅力を伝えていく。
先日もUNION TOKYOの4周年を記念して、DIGAWEL、PORTERとのトリプルコラボによるアイテムをリリースするなど、当店とも縁の深いSTONES THROW。LAを代表するそんなインディペンデントレーベルに所属し、ニューエイジ・ミュージックを更新し続けるピアニスト、ジョン・キャロル・カービーをご存知だろうか。今週末にスタートする初来日ツアーを目前に、今回の『KNOW THE LEDGE / MUSIC BREAK』では本人へのインタビューを行い、その言葉も借りながら彼の魅力を伝えていく。
LAの北東に隣接する街、パサデナで生まれ育ったジョン・キャロル・カービーが初めて楽器に触れたのは彼が13歳の頃だった。「親友のマイケル・ドワイヤーっていうやつに誘われてピアノのレッスンに行ったんだ。それが始まりだった。俺たちの先生はロアーク・ハニカットっていう人で、とてもイカしてた。レッスンに通い始めてすぐ、プロのミュージシャンとして音楽をやっていきたいんだっていう気持ちが自分にあることを知ったよ。それを絶対に諦めないってこともね」。
カービーが生み出す音楽は、1960年代のヒッピー文化に由来するスピリチュアルな世界観が特徴のニューエイジ・ミュージックや、またはアンビエントとして語られることが多い。しかし彼の諸作品は、そうしたジャンル名から連想されるイメージが歪むようなどこか得体の知れない感触をリスナーの耳に残す。これまでに音楽的影響を受けたミュージシャンについて彼に尋ねてみた。「アーマッド・ジャマル、ハービー・ハンコック、オスカー・ピーターソン、ファッツ・ウォーラー、ウォーリー・バダロウ、それに細野晴臣」。そう、多くを占めているのはジャズミュージシャンたちだ。STONES THROW所属後の1作目となる2020年のアルバム『My Garden』リリース時に音楽ジャーナリストの原雅明氏が行ったインタビューでも、南カリフォルニア大学(USC)ソーントン音楽学校でジャズを学んでいたこと、そしてそれ以前から伝説的ジャズベーシストのジョン・クレイトンに師事していたことが語られていた。彼の音楽性、その根底にはジャズがある。
それでもカービーはUSC卒業後にジャズの世界には入らず、ミクスチャーロックバンドのウェポン・オブ・チョイスへと加入している。この選択は、以前の記事で紹介した同郷のサンダーキャットとも共通する、豊かで開かれた音楽シーンを持つLAらしいエピソードだ。サンダーキャットもまたジャズの素養を持ちながら、そのキャリアをハードコアバンドのスイサイダル・テンデンシーズでスタートさせた後、LAを拠点とする音楽レーベルのブレインフィーダーに合流しエクスペリメンタルなベーシストとして無二のスタイルを確立させていった。
さらに加えるなら、タイラー・ザ・クリエイターも自身の音楽的原体験を母親が愛聴していたジャズだと語っている。フライングロータスも2014年のアルバム『You're Dead!』ではジャズをテーマに据えながら、その解釈を大きく拡張する名作を完成させた。ゼロ年代以降にLAから同時多発的に噴出したこれら異形の才能たちはすべて、あの街の地下深くでマグマ溜まりのように蓄積されたジャズのエレメントを源とし、その脈を辿ることができるのかもしれない。そうやって考えると、音楽的には異質ながら彼がSTONES THROWに認められたことにも納得がいく。
LAの北東に隣接する街、パサデナで生まれ育ったジョン・キャロル・カービーが初めて楽器に触れたのは彼が13歳の頃だった。「親友のマイケル・ドワイヤーっていうやつに誘われてピアノのレッスンに行ったんだ。それが始まりだった。俺たちの先生はロアーク・ハニカットっていう人で、とてもイカしてた。レッスンに通い始めてすぐ、プロのミュージシャンとして音楽をやっていきたいんだっていう気持ちが自分にあることを知ったよ。それを絶対に諦めないってこともね」。
カービーが生み出す音楽は、1960年代のヒッピー文化に由来するスピリチュアルな世界観が特徴のニューエイジ・ミュージックや、またはアンビエントとして語られることが多い。しかし彼の諸作品は、そうしたジャンル名から連想されるイメージが歪むようなどこか得体の知れない感触をリスナーの耳に残す。これまでに音楽的影響を受けたミュージシャンについて彼に尋ねてみた。「アーマッド・ジャマル、ハービー・ハンコック、オスカー・ピーターソン、ファッツ・ウォーラー、ウォーリー・バダロウ、それに細野晴臣」。そう、多くを占めているのはジャズミュージシャンたちだ。STONES THROW所属後の1作目となる2020年のアルバム『My Garden』リリース時に音楽ジャーナリストの原雅明氏が行ったインタビューでも、南カリフォルニア大学(USC)ソーントン音楽学校でジャズを学んでいたこと、そしてそれ以前から伝説的ジャズベーシストのジョン・クレイトンに師事していたことが語られていた。彼の音楽性、その根底にはジャズがある。
それでもカービーはUSC卒業後にジャズの世界には入らず、ミクスチャーロックバンドのウェポン・オブ・チョイスへと加入している。この選択は、以前の記事で紹介した同郷のサンダーキャットとも共通する、豊かで開かれた音楽シーンを持つLAらしいエピソードだ。サンダーキャットもまたジャズの素養を持ちながら、そのキャリアをハードコアバンドのスイサイダル・テンデンシーズでスタートさせた後、LAを拠点とする音楽レーベルのブレインフィーダーに合流しエクスペリメンタルなベーシストとして無二のスタイルを確立させていった。
さらに加えるなら、タイラー・ザ・クリエイターも自身の音楽的原体験を母親が愛聴していたジャズだと語っている。フライングロータスも2014年のアルバム『You're Dead!』ではジャズをテーマに据えながら、その解釈を大きく拡張する名作を完成させた。ゼロ年代以降にLAから同時多発的に噴出したこれら異形の才能たちはすべて、あの街の地下深くでマグマ溜まりのように蓄積されたジャズのエレメントを源とし、その脈を辿ることができるのかもしれない。そうやって考えると、音楽的には異質ながら彼がSTONES THROWに認められたことにも納得がいく。
STONES THROWについても尋ねてみた。過去に同レーベル傘下のLeaving Recordsにいた彼は、2020年発売のアルバム『My Garden』以降、現在まで4枚のアルバムをSTONES THROWからリリースしている。「俺はLAで育ったから、レーベルの存在はずっと前から知っていたよ。特にJ・ディラが好きだった。それまでジャズしか聴いていなかった俺に、彼の作品は複雑なビートメイキングやプロダクションから生まれる音楽というものを教えてくれたんだ。その後に自分もジョインすることになるわけだけど、レーベルメイトはみんな流行に惑わされることなく、誠実でオーセンティックな音楽を作ることに専念していると感じるね」。
今年4月にリリースされた最新作『Dance Ancestral』。そのタイトルが示すように(Ancestralは“先祖から伝わるもの”を意味する)、音楽で身体を揺らすというプリミティブな喜びやその歴史を再び紡ぎ始めようとするような、心地よくもはっきりとした意志を感じる作品だ。「パンデミックで隔離されている期間、俺には内省する時間がたくさんあった。その中で、自分や周囲の人間があるパターンに陥っていることに気付いたんだ。そのパターンっていうのは、喜び、愛、熟考、疑い、恐れ、暴力、無関心、そして希望。これだけ高度に発達した社会でも、いまだにこれらの行動を繰り返しているのかってね。人生における生来の歩み(The innate steps we take in life)。それについて考えたことが、このアルバムのインスピレーションになっているよ。ポル・アングラダっていう素晴らしいアーティストが手掛けてくれたジャケットもそれを表しているんだ。俺が繰り返すことを運命づけられた先祖たちの儀式。 遠く離れた大天使につながろうとメイポール(主にヨーロッパの民俗祭に見られる装飾された背の高い木の棒。5月柱とも呼ばれる)のまわりで踊る子供たち。俺たちを悪へと誘う蛇と果実。そうした自分を突き動かすDNAというのがどんなものか想像したかったんだ」。
本作ではまた、バンクーバーのオルタナティブなハウス、エレクトロニック・ミュージックシーンで活躍するプロデューサーのユー・スーを制作パートナーに迎えたことも特筆すべき点として挙げられる。「ユー・スーのレコード『Yellow River Blue』が大好きだった。 彼女はきっと、俺の音楽的ボキャブラリーにはない何かをこのアルバムにもたらしてくれると思ったんだ。 俺たちはインスタグラムで知り合い、オンライン上で良い感じにやり取りしていたよ。コロナ禍の制作だったから最近まで直接会うことはできなかったんだけどね」。
本人のアーティスト名義では今回が初めての来日ツアーとなる。カービーにとってこの国はどのように映っているのだろうか。「幼い頃から日本の文化には興味を持っていたんだ。 大学では能楽の授業を受けて深く感動したことも覚えてる。その後はYMOにも影響を受けたよ。『エキゾチカ』における細野晴臣の解釈には特にね。時々思うんだ。自分がやっているのは、パロディを繰り返すうちに皮肉がなくなり、その真正性を取り戻していくような、あのアルバムのサードウェーブみたいな音楽なんじゃないかってね」。最後に、今回の来日ツアーに向けてカービーからメッセージをもらった。「日本でまた演奏できるなんて夢のようさ。ファンにはとても感謝してる。みんなのために演奏できるのが待ち遠しいよ」。
STONES THROWについても尋ねてみた。過去に同レーベル傘下のLeaving Recordsにいた彼は、2020年発売のアルバム『My Garden』以降、現在まで4枚のアルバムをSTONES THROWからリリースしている。「俺はLAで育ったから、レーベルの存在はずっと前から知っていたよ。特にJ・ディラが好きだった。それまでジャズしか聴いていなかった俺に、彼の作品は複雑なビートメイキングやプロダクションから生まれる音楽というものを教えてくれたんだ。その後に自分もジョインすることになるわけだけど、レーベルメイトはみんな流行に惑わされることなく、誠実でオーセンティックな音楽を作ることに専念していると感じるね」。
今年4月にリリースされた最新作『Dance Ancestral』。そのタイトルが示すように(Ancestralは“先祖から伝わるもの”を意味する)、音楽で身体を揺らすというプリミティブな喜びやその歴史を再び紡ぎ始めようとするような、心地よくもはっきりとした意志を感じる作品だ。「パンデミックで隔離されている期間、俺には内省する時間がたくさんあった。その中で、自分や周囲の人間があるパターンに陥っていることに気付いたんだ。そのパターンっていうのは、喜び、愛、熟考、疑い、恐れ、暴力、無関心、そして希望。これだけ高度に発達した社会でも、いまだにこれらの行動を繰り返しているのかってね。人生における生来の歩み(The innate steps we take in life)。それについて考えたことが、このアルバムのインスピレーションになっているよ。ポル・アングラダっていう素晴らしいアーティストが手掛けてくれたジャケットもそれを表しているんだ。俺が繰り返すことを運命づけられた先祖たちの儀式。 遠く離れた大天使につながろうとメイポール(主にヨーロッパの民俗祭に見られる装飾された背の高い木の棒。5月柱とも呼ばれる)のまわりで踊る子供たち。俺たちを悪へと誘う蛇と果実。そうした自分を突き動かすDNAというのがどんなものか想像したかったんだ」。
本作ではまた、バンクーバーのオルタナティブなハウス、エレクトロニック・ミュージックシーンで活躍するプロデューサーのユー・スーを制作パートナーに迎えたことも特筆すべき点として挙げられる。「ユー・スーのレコード『Yellow River Blue』が大好きだった。 彼女はきっと、俺の音楽的ボキャブラリーにはない何かをこのアルバムにもたらしてくれると思ったんだ。 俺たちはインスタグラムで知り合い、オンライン上で良い感じにやり取りしていたよ。コロナ禍の制作だったから最近まで直接会うことはできなかったんだけどね」。
本人のアーティスト名義では今回が初めての来日ツアーとなる。カービーにとってこの国はどのように映っているのだろうか。「幼い頃から日本の文化には興味を持っていたんだ。 大学では能楽の授業を受けて深く感動したことも覚えてる。その後はYMOにも影響を受けたよ。『エキゾチカ』における細野晴臣の解釈には特にね。時々思うんだ。自分がやっているのは、パロディを繰り返すうちに皮肉がなくなり、その真正性を取り戻していくような、あのアルバムのサードウェーブみたいな音楽なんじゃないかってね」。最後に、今回の来日ツアーに向けてカービーからメッセージをもらった。「日本でまた演奏できるなんて夢のようさ。ファンにはとても感謝してる。みんなのために演奏できるのが待ち遠しいよ」。
STONES THROW x UNION
John Carroll Kirby JP TOUR TEE ¥7,920
今回の来日ツアーを記念して、STONES THROWとUNIONによるコラボTシャツを発売。
デザインは、ジョン・キャロル・カービーの過去作『CONFLICT』と『SEPTET』のジャケットや、UNIONでも取り扱いのあるLAのブランド、
TOTAL LUXURY SPAのグラフィックを手掛けるデザイナー、ジャスティン・スローンが手掛けている。
STONES THROW x UNION
John Carroll Kirby JP TOUR TEE ¥7,920
今回の来日ツアーを記念して、STONES THROWとUNIONによるコラボTシャツを発売。デザインは、ジョン・キャロル・カービーの過去作『CONFLICT』と『SEPTET』のジャケットや、UNIONでも取り扱いのあるLAのブランド、TOTAL LUXURY SPAのグラフィックを手掛けるデザイナー、ジャスティン・スローンが手掛けている。
Release Date
2022/6/1 (WED)
UNION TOKYO STORE OPENING HOUR:12PM JST
UNION TOKYO ONLINE STORE:9AM JST
■TOUR INFO
TOUR INFORMATION
5/28(土) FFKT Festival(長野)
https://ffkt.jp/2022/
5/30(月) Billboard Live(東京)
1st Show: 18:00- | 2nd Show: 21:00-
http://www.billboard-live.com/pg/shop/show/index.php?mode=detail1&event=13351&shop=1
Release Date
2022/6/1 (WED)
UNION TOKYO STORE OPENING HOUR:12PM JST
UNION TOKYO ONLINE STORE:9AM JST
■TOUR INFO
TOUR INFORMATION
5/28(土) FFKT Festival(長野)
https://ffkt.jp/2022/
5/30(月) Billboard Live(東京)
1st Show: 18:00- | 2nd Show: 21:00-
http://www.billboard-live.com/pg/shop/show/index.php?mode=detail1&event=13351&shop=1
INTERVIEW&TEXT:YOHSUKE WATANABE (IN FOCUS)
PHOTOGRAPH:Angela Suarez/Jack McKain/Sela Shiloni