KNOW THE LEDGE / Running was Raw Epi.04 NIKE WAFFLE RACER

KNOW THE LEDGE / Running was Raw Epi.04 NIKE WAFFLE RACER

Epi.04 NIKE WAFFLE RACER
ワッフルソールの歴史に育まれた ランナーのためのスピードシューズ

NIKEのランニングの歴史は約50年前に始まっている。常に革新的なテクノロジーを生み出すためにアイデアを磨いてきた日々の積み重ねが、現代における厚底ブームを作り出したともいえる。私たちが日常のファッションに、そして日々のランニングに履いているNIKEのシューズがどう生まれ、進化し、その系譜を辿っていたか。今回はその初期といえる1970年代の名品にフォーカスしてストーリーを掘り下げてみたい。Epi 04は1977年誕生の「WAFFLE RACER」。

Photograph:Keita Goto[W] Text:Masayuki Ozawa Production:MANUSKRIPT
Special Thanks : Karimoku, Commons Tokyo / wagetsu わ月

1970年代のランニングシューズは現代における靴作りの基礎になった。基本的な保護と最小限のサポートでいかに軽さを追求し、ランナーにスピードを提供してきた。そういった挑戦の中でNIKEは「CORTEZ」を生み出し、歴史を歩み始めた。しかしこのモデルがオニツカタイガーのために作ったシューズが原型である。どれだけビル・バウワーマンの発想が注がれていても、本当の意味でNIKEらしい靴ではないのかもしれない。

「CORTEZ」はつま先から踵までスポンジ入りのミッドソールを搭載した高いクッション性が注目された。しかしその後、NIKEはワッフルソールを発明する。これはビル・バウワーマンが朝食を作るためのワッフル焼き器をヒントに、アウトソールのゴム材を形に流し込むことで完成した物語のような作品だ。ソールの凹凸が悪路に対してグリップ力を発揮すると目論んだが、結果としてその突起が衝撃吸収に効果があるとわかり、ランニングシューズの歴史を変えるクッションテクノロジーとなった。

やがて初の市販品として「OREGON WAFFLE」を世に送り出した。ランナーたちは当初、その斬新な見た目に懐疑的だったが、黄色と緑のカラーリングは、NIKEのお膝元であるオレゴン大学の名物として広く知れ渡るようになり、ワッフルソールを印象付け、クッションの有効性のアピールにも成功した。

OTC(オレゴントラッククラブ)に所属していたジョン・アンダーソンは、この頃に「OBORI」を履いてボストンマラソンを優勝した、70年代のアメリカを代表するランナーだ。NIKEは、彼のトレーニングのためにレーシングモデルの「OBORI」にワッフルソールを付けることを提案。そうして1974年に「WAFFLE TRAINING」を開発。これにはまだ快適性の面で改良の余地があり、つま先の補強やソールの形状を安定させた「WAFFLE TRAINER」が1977年にリリースされた。

つま先をぐるりと補強するスウェードを見れば、この「WAFFLE RACER」が「OREGON WAFFLE」の後継であるかがわかるだろう。しかしこのレーシングシューズは、さまざまなワッフルのヒストリーが絡み合って生まれたものだ。前出のEPI 02.「STING」ではワッフルソールはトレーニング用であり、蜂の巣構造のアウトソールがレーシング用と書いたが、70年代後半にミッドソールにEVA素材が採用され、シューズの軽量化が進んだことも「WAFFLE RACER」が生まれた背景にあるだろう。スウェードの補強を覆うように大きなワッフルが安定性を高めているが、この時点でレースに勝てるシューズの条件は、揃っていたのである。

「WAFFLE RACER」はモデル名に「ワッフル」がつく最後のランニングシューズとして4年近くも製造された。このグリーンのアッパーに黒のスウッシュが有名で、ヴィンテージ市場で存在感を放っているが、それ以上にSMU(Special Make Up=大学や選手個人のために特別に生産していたシューズ)と呼ばれる特別なカラーを探しているファンは多い。アスリートの細かいニーズに応え続けてきた黎明期の小さな積み重ねによって、全米のマーケットを開拓してきた意味でも、このシューズは、NIKEの原点ともいえる。

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Epi.04 NIKE WAFFLE RACER
ワッフルソールの歴史に育まれた
ランナーのためのスピードシューズ

NIKEのランニングの歴史は約50年前に始まっている。常に革新的なテクノロジーを生み出すためにアイデアを磨いてきた日々の積み重ねが、現代における厚底ブームを作り出したともいえる。私たちが日常のファッションに、そして日々のランニングに履いているNIKEのシューズがどう生まれ、進化し、その系譜を辿っていたか。今回はその初期といえる1970年代の名品にフォーカスしてストーリーを掘り下げてみたい。Epi 04は1977年誕生の「WAFFLE RACER」。

Photograph:Keita Goto[W] Text:Masayuki Ozawa Production:MANUSKRIPT
Special Thanks : Karimoku, Commons Tokyo / wagetsu わ月

1970年代のランニングシューズは現代における靴作りの基礎になった。基本的な保護と最小限のサポートでいかに軽さを追求し、ランナーにスピードを提供してきた。そういった挑戦の中でNIKEは「CORTEZ」を生み出し、歴史を歩み始めた。しかしこのモデルがオニツカタイガーのために作ったシューズが原型である。どれだけビル・バウワーマンの発想が注がれていても、本当の意味でNIKEらしい靴ではないのかもしれない。

「CORTEZ」はつま先から踵までスポンジ入りのミッドソールを搭載した高いクッション性が注目された。しかしその後、NIKEはワッフルソールを発明する。これはビル・バウワーマンが朝食を作るためのワッフル焼き器をヒントに、アウトソールのゴム材を形に流し込むことで完成した物語のような作品だ。ソールの凹凸が悪路に対してグリップ力を発揮すると目論んだが、結果としてその突起が衝撃吸収に効果があるとわかり、ランニングシューズの歴史を変えるクッションテクノロジーとなった。

やがて初の市販品として「OREGON WAFFLE」を世に送り出した。ランナーたちは当初、その斬新な見た目に懐疑的だったが、黄色と緑のカラーリングは、NIKEのお膝元であるオレゴン大学の名物として広く知れ渡るようになり、ワッフルソールを印象付け、クッションの有効性のアピールにも成功した。

OTC(オレゴントラッククラブ)に所属していたジョン・アンダーソンは、この頃に「OBORI」を履いてボストンマラソンを優勝した、70年代のアメリカを代表するランナーだ。NIKEは、彼のトレーニングのためにレーシングモデルの「OBORI」にワッフルソールを付けることを提案。そうして1974年に「WAFFLE TRAINING」を開発。これにはまだ快適性の面で改良の余地があり、つま先の補強やソールの形状を安定させた「WAFFLE TRAINER」が1977年にリリースされた。

つま先をぐるりと補強するスウェードを見れば、この「WAFFLE RACER」が「OREGON WAFFLE」の後継であるかがわかるだろう。しかしこのレーシングシューズは、さまざまなワッフルのヒストリーが絡み合って生まれたものだ。前出のEPI 02.「STING」ではワッフルソールはトレーニング用であり、蜂の巣構造のアウトソールがレーシング用と書いたが、70年代後半にミッドソールにEVA素材が採用され、シューズの軽量化が進んだことも「WAFFLE RACER」が生まれた背景にあるだろう。スウェードの補強を覆うように大きなワッフルが安定性を高めているが、この時点でレースに勝てるシューズの条件は、揃っていたのである。

「WAFFLE RACER」はモデル名に「ワッフル」がつく最後のランニングシューズとして4年近くも製造された。このグリーンのアッパーに黒のスウッシュが有名で、ヴィンテージ市場で存在感を放っているが、それ以上にSMU(Special Make Up=大学や選手個人のために特別に生産していたシューズ)と呼ばれる特別なカラーを探しているファンは多い。アスリートの細かいニーズに応え続けてきた黎明期の小さな積み重ねによって、全米のマーケットを開拓してきた意味でも、このシューズは、NIKEの原点ともいえる。

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